日本
中世玄界灘地域の朝鮮通交
日本
中世玄界灘地域の朝鮮通交
- 出版社
- 九州大学出版会
- 出版年月日
- 2023.08
- 価格
- \8,580
- ページ数
- 386
- ISBN番号
- 9784798503486
- 説明
- 中世日朝関係は、多数の日本人通交者が朝鮮と交易を展開したという多元性が特徴とされてきた。『朝鮮王朝実録』や『海東諸国紀』などの朝鮮側の史料には、日本の史料では確認できない様々な階層の通交者が来朝したと記されている。しかし、「深処」と称される対馬以外の地域から来る日本人通交者の大半は、15世紀より既に対馬や博多の通交勢力が派遣していた偽使であることが解明された。こうした研究成果により、日朝通交における日本人通交者の多元性は、ともすれば偽使派遣勢力が作り出した虚構に基づく幻想に過ぎないと捉えられてきた。
しかし、深処には偽使が横行し始めたとされる15世紀中期においても、独自に朝鮮との関係を進展させて使者を派遣していた通交者も存在する。従って、当時の通交状況を偽使のみに集約して考えることは、実態にそぐわない。さらに日朝通交は、使者のみならず、興利倭人や漁民といった、実際に朝鮮に来朝して経済活動に従事する零細な海民によっても支えられていた。こうした関心に基づき、本書では中世日朝通交の特徴とされる地域の広域性・階層の重層性・性格の多様性について、通交権と名義の視点から分析を加え、その実態を明らかにした。