日本
朱熹『小学』研究
日本
朱熹『小学』研究
- 出版社
- 汲古書院
- 出版年月日
- 2021.09
- 価格
- ¥9,900
- ページ数
- 325
- ISBN番号
- 9784762966941
- 説明
- 現行本『小学』は朱熹の編纂書である――朱熹の編纂意図に迫る論考。
【序章より】(抜粋)
近世の東アジアに大きな影響を与えた朱熹(一一三〇~一二〇〇)は、学問を「小学」「大学」に区分した。八歳から学ぶ「小学」と、十五歳から学ぶ「大学」である。朱熹の学問は、後世「朱子学」と呼ばれ、中国のみならず日本・朝鮮・ベトナム等広範囲の地域に広がっていった。学問を「小学」「大学」という段階で区分することも、近世の東アジアにおいて共有されることとなる。(中略)
大学の学問に関して朱熹は、『大学章句』を始めとする『四書集注』や『近思録』(呂祖謙との共編)などを執筆した。そして淳熙十四年(一一八七)、小学を学ぶためのテキストとして『小学』を編纂した。朱熹の著書は、その後の朱子学の影響と共に大いに読まれることとなる。日本でも、江戸時代の藩校や書院では『四書集注』と共に、『小学』が教科書として読まれていた。歴史上、『小学』を読んだ者は相当数にのぼるであろう。ところが、近代以降、研究対象として『小学』が採りあげられることはほとんどない。『四書集注』と共にかつては東アジアにおいて圧倒的な読書人口を持った『小学』であったが、現在の研究においてはほとんど顧みられることがない。その要因は主に二つある。一つは著者の問題、いま一つは経書などから引用してきただけの書と見られることである。(中略)
『小学』については、明代までは朱熹の著とされてきたが、『四書全書総目』が「『小学』の編纂は、実際には劉清之に託した」と記したことを筆頭として、清以降になると、朱熹が劉清之(一一三三~一一八九)に依頼して編纂した書とする見方が増えていった。『小学』は劉清之と朱熹の共編、あるいは朱熹は指示を出しただけで実際には劉清之が編纂したという見解である。『小学』が朱熹の編纂書でなければ、朱熹研究として注目されないのは仕方のないことである。しかし、朱熹と劉清之の『小学』に関するやりとりを確認する限り、現行本『小学』は朱熹の意が反映された朱熹の編纂書である。(中略)
……本稿では、近代以降の研究対象としてはあまり顧みられることのない『小学』について、朱熹がどのような見解に基づき、どのような意図を働かせていったのかを検討していく。朱熹の『小学』編纂に対する配慮を確認するものであり、いわば本稿は編纂者としての朱熹に注目するものである。