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日本

一切経音義古写本の研究

一切経音義古写本の研究

日本

一切経音義古写本の研究

著者
李乃琦
出版社
汲古書院
出版年月日
2021.12
価格
¥6,050
ページ数
174
ISBN番号
9784762936593
説明
「全文データベース」を駆使して、現存古写本や古辞書引用文の系統を明らかにする。
『一切経音義』は中国で編纂された書物であるが、現在中国では版本の『一切経音義』しか残されていない。それに対して、日本では、10種以上の写本が現存している。これまで、『一切経音義』の版本については、中国語学・文献学の視点から十分研究されてきたが、日本にのみ現存する古写本については十分な研究が未だなされていない状況である。一方、『一切経音義』は平安時代古辞書である『新撰字鏡』と『類聚名義抄』が編纂された時に、基幹資料として使われたことから、国語学研究においても貴重な資料である。にもかかわらず、両者の関係については研究が不十分だと言わざるをえない。その理由は、日本に現存する平安時代以来の『一切経音義』古写本に、少なくとも二つの系統が想定され、「日本古辞書がどの系統の一切経音義を引いたのか」がそもそも解明されていないためである。膨大な言語情報を持つ『一切経音義』が日本に伝来した後、どのように利用されたのか。特に、日本古辞書の編纂にどのような影響を与えたのかを解明することを、本研究の目的の一つとする。そのため、平安時代の代表的な古辞書である『新撰字鏡』、『類聚名義抄』と仏典音義の『一切経音義』を比較して、日本辞書編纂史における中国文献の享受の実態を考察する。
 第1章では、まず、今まで盛んに研究された『一切経音義』版本についての研究成果をまとめる。版本において、系統・校勘・音韻・語彙・字体・出典・情報学などの分野で研究されてきたが、その結果は写本の研究に対しても、有効な研究方法だと考えられる。次に、日本では既に『一切経音義』と日本古辞書についての研究があるが、それらの研究を検証した上で、残されている問題を明らかにし、本研究で解決すべき問題を定める。
 第2章では、膨大な量を持つ9種の『一切経音義』古写本を処理するため、「一切経音義全文データベース」を構築した。その結果に基づき、さらに『一切経音義』の構成を考慮し、経目名と本文との二つの部分に分けて、別々に系統分類を検討する。最後に、その結果と『一切経音義』の構成・書写形式を合わせて考察し、古写本の系統分類を明らかにする。
 第3章では、原撰本『類聚名義抄』における『一切経音義』の利用について検討する。原撰本『類聚名義抄』には「广云」などの形式で、『一切経音義』からの引用を明記している