日本
債鬼転生 討債鬼故事に見る中国の親と子
日本
債鬼転生 討債鬼故事に見る中国の親と子
- 出版社
- 知泉書館
- 出版年月日
- 2019.10
- 価格
- ¥4,950
- ページ数
- 368
- ISBN番号
- 9784862853073
- 説明
- 金を奪われるか,借金を踏み倒された人物が死後,加害者の子供に転生し,重い病気になったり放蕩したりして,今度は逆に親の金を浪費する。その金額は盗んだ金や借金の額と同じであり,子供は取り立てが終わると親の心に深い傷だけを残して去っていく……。
討債鬼故事は中国において千数百年にわたり語り継がれてきた怪談である。本書は,この辛口の物語がどのように生まれ,展開していったのかを通時的広域的に追求し,その宗教思想的背景をも描いた独創的な研究成果。
元来インドにおいて輪廻とは不幸であり,復讐は否定される行為であったが,中国ではその二つを核とする討債鬼故事が仏教伝来七百年後の中唐期に誕生した。著者はその誕生過程を,六朝漢訳仏典に淵源する転生復讐譚,現存最古の討債鬼故事「党氏女」,そして動物へ転生する畜類償債譚の考察を通して丁寧に辿る。さらに元から明に作られた戯曲の分析から,その故事が運命の不条理に苦しむ親の心を慰撫する話へと変化する様を解明。最後に日本における受容をも論じて,結末の違いから日中で異なる家族観を浮かび上がらせる。
中国や台湾で今も身近であるが故に研究対象とされてこなかった討債鬼故事。しかしそれは,中国人社会の家族観・経済観・生命観・運命観を考える上でも多くの有益な知見を提供してくれる。文学研究のみならず,思想・歴史・民俗研究にとっても貴重な示唆に富む一書である。